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認知症ご本人との対談
市内在住の認知症本人の内山さんのお話を中心に、認知症家族会「ひまわりの会」のさくらさん、南部地域包括支援センターの五十右さんを交えて、令和7年7月に対談を行いました。
写真左:さくらさん、写真中央:五十右さん、写真右:内山さん
※広報やいづ(令和7年9月1日号)に概要版を掲載していますが、次の対談内容と表現が異なる場合があります。
対談内容
認知症と診断を受けて
司会)認知症と診断を受けた時の心境を教えてください。
内山さん)すごくショックでした。当時、市内の介護事業所で送迎の仕事をしていました。仕事が終わり帰宅した夜、自分の部屋で倒れてしまいました。自分では記憶がないのですが、倒れたことに妻が気づいて、病院に運ばれ、突発性の「てんかん」と診断されました。その後、別の専門医を紹介され、精密検査をしたところアルツハイマー型の認知症と診断されました。診断された時は、これから自分が生活するに当たって、周りに迷惑をかけてしまうのではという気持ちで不安が大きくて、「認知症」という言葉の負荷が大きかったです。ただ、その時の医師の言葉に救われたのを覚えています。「認知症であることは確かなので現実を受け入れてほしい」という内容を言われましたが、それを伝えるための医師の言葉選びに優しさを感じました。医療機関としてフルにサポートすると言ってくれたその言葉にもすごく安心して、力がスッと抜けていく感じがしました。送迎の仕事で認知症の人と接する機会も多かったので、同じように自分も普通に生活していこうと気持ちを切り替えることができました。
また、以前送迎の仕事で、ある利用者さんが「送迎を担当してくれるのが、あなたでよかった。認知症の人だとしても、あなたは普通に話を聞いてくれるから。話を聞いてもらえるのがとても嬉しいよ」と言われたことがありました。認知症でも特別扱いを受けずに、普通に話を聞いてくれることはとても嬉しいことです。今は、妻が話を聞いてくれてありがたく思っています。逆に自分が発信したいことを聞いてもらえないことが非常に辛いことです。
五十右さん)内山さんは送迎の時に認知症の利用者さんを特別扱いせずに普通に接して話を聞いていたから、利用者さんにとっては嬉しかったんですよね。
内山さん)そういうことなんだと思います。送迎中での会話もごく自然にしていたので、それが嬉しかったんだと思います。今は、逆にその利用者さんの気持ちが痛いほどわかります。
司会)ご家族が認知症と診断された時の心境を教えてください。
さくらさん)家族もすごくショックを受けます。その後、介護をしていく中で、誰にも苦労を相談できずに泣いてしまう人もいます。家族会に参加して、回を重ねるごとに親戚や友達にも言えない思いを吐露できるようになって気持ちが整理できる人が多いので、認知症の方と同じように家族も自分の気持ちを話して、それを聞いてもらえることが嬉しいことなんだと思います。
五十右さん)想いを話して、それを聞いてくれることがご本人にもとっても、ご家族にとっても重要なことなんですね。
認知症と共に生きる
司会)認知症と診断された後、生活にはどういった変化がありましたか。
内山さん)幸いにも体に不自由がなく動くことができるので、生活していく上でそれは良かったことだと思います。ただ、車の運転が出来なくなってしまったことが一番辛かったです。医師から絶対に運転はダメですと言われてしまいまして。今までであれば、気晴らしに車で海に行ったり、コンビニに行ったりしていたのができなくなったため、家にいるしかなくて、何もできない状態になり、本当に辛かったです。今は基本的に妻に車を運転してもらっています。
五十右さん)でも、内山さん、先日お一人でバスと電車で病院行かれてましたよね。
内山さん)はい、一人で行きました。受診の時に、医師からとにかく「頭を使いましょう」「運動をしましょう」「会話をしましょう」の三つを言われます。話をするってことは頭を使うことにつながって、いろいろな人と出会って会話するので脳の活性化になります。運動として散歩をしていますが、色々な人と出会うため、顔見知りの人が沢山できました。言葉も考えながら伝えるようにしています。あと、一週間に一度新聞の数字パズルの問題を解いています。
五十右さん)解いた答えを抽選に応募してるんですよね。
内山さん)はい。当選したこともあり、いただいた賞金を使って家族でご飯を食べに行きました。応募の際に、紙面や記事の感想を書くことが自分にとって励みになっています。応募ハガキを出すためには、数字パズルの問題を解くこと、紙面や記事の感想を書くこと、新聞を切り抜いてハガキに貼ることなど、いくつかの工程を踏む必要があり、それを成し遂げるために工夫をしています。例えば、数字パズルの問題を解くために、手書きで時間を掛けて解くのではなく、エクセルを使って問題を解く手順のフォーマットを作成するといった仕組みづくりの工夫をしています。わかりやすくするように、セルを色分けもしています。そうすることで効率よく問題も解けます。
司会)エクセルに詳しいんですね。そういったお仕事もされていたんですか。
内山さん)送迎の仕事の前に、そういった仕事をしていました。医師から言われた三つの重要な事を意識して毎日生活しています。
皆さんへのメッセージ
司会)最後に認知症のご本人や市民の方に向けてメッセージをお願いします。
内山さん)近所の人にもよく伝えていることですが、ご自身に少しでも異変や不具合を感じた場合は、すぐに医療機関を受診していただきたいです。早く受診をして、原因が分かれば今後の方針もすぐに決められると思います。加えて、認知症は特別なことではないです。誰でもかかる可能性があります。ご自身の周りに認知症の人がいたら、話を聞いてあげてください、コミュニケーションを取ってあげてください。
さくらさん)癌について告知しないという考えが以前ありましたが、今と昔で違います。認知症も、近い将来、隠すことなく、特別なことではないという考え方に変わって、認知症本人の意思を尊重する社会になってほしいです。本人が就労などをし、社会とつながりを持てる認知症の人が活躍できる焼津市になってほしい。また、認知症に限ったことではありませんが、家族には介護を始める時期は選べないものです。いつ介護をすることになるか分からないからこそ、予備知識は持っておいた方がいいと思います。認知症は誰にでもなりうる病気であるからこそ、決して孤立しないで、周りを巻き込んで介護をする勇気を持ってほしいです。
五十右さん)認知症の方は介護保険のサービスを使いたくなった時点で地域包括支援センターへ相談に来られることが多いのですが、介護認定を受ける前や診断を受けた時に相談いただければ、今後の生活についてより幅広く案内ができます。また、内山さんが言っていたようにコミュニケーションがとても大事なので、地域で気軽に集って話し合える場所が今後もっと増えていくといいですね。
司会)認知症になると何もできなくなってしまうという考え方もありますが、それに対して内山さんはどうお考えですか。
内山さん)大前提として、自分は決して何もできなくなるのではなく普通に生活できています。認知症は決して特別なことではないです。
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ページ更新日:2025年9月1日