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方言「さ行」
さ(6)
- ざあ
- ささらほうさら
- さばく
- さぶい
- …さら
- さんだす
ざあ
意味
ましょう
使用例
利彦ちゃん今日は入学式だで一緒にいかざあ。
(利彦ちゃん今日は入学式だから一緒に行きましょう。)
解説
ざあという語は、動詞の後について話し手(または書き手)の意志・勧誘を表しました。
ささらほうさら
意味
ちらけっぱなし
使用例
「しょんないねーこの子は。ささらほうさらで片付けようんないやぁ。」
(「しょうがないねー、この子は。ちらけっぱなしで片付けようがないよ。」)
さばく
意味
破る
使用例
「あぁあ、誰だね、せっかく張った障子をさばいちゃったのは」
(「あぁあ、誰なの、せっかく張った障子を破ってしまったのは」
解説
暮れもおしせまり、めんどくさい障子張りもやっと終わって、ほっとしている矢先に、いたずら盛りの子どもが破ってしまった。どっと疲れて嘆く母のつぶやきである。
頭にきて、ビリビリに破ってしまうことを「やっきりして、びりさばく」と言います。とても迫力がありますね。
さぶい
意味
寒い
使用例
「ぽんぽんでいかすかと思ったけえが、きょうはさぶいでやーめた。」
「いいからかんなこと言うな、わりゃあ。きんのはともかく、きょうはぬくといわ。」
「だけん、ふぜえだの奥で雪だっちょうよ。」
「な、だで、さぶいって言ったじん。」
(「バイクで行こうかと思いましたが、きょうは寒いからやめました。」
「いい加減なことは言わないで、あなた。昨日はともかく今日は暖かいですよ。」
「だけど、藤枝の山間部で雪ですってよ。」
「ね、だから、寒いって言ったでしょ。」)
…さら
意味
ごと
使用例
「皮さら食え」ったって皿まで食わなくても・・・
(「皮ごと食べなさい」って言ったからって、お皿まで食べなくても・・・
さんだす
意味
差し出す
使用例
鉛筆を3ダースさんだす。
(鉛筆を3ダース差し出す)
し(18)
- しいなくれる
- シエール・シエースカ・シエーライ
- …しがつら
- したったか
- しなべる
- シマイカ
- ジュルイ
- しょぐなる
- しょづむ
- しょほうら
- しょろしょろ
- じょんじょん
- しょんばい
- シラ
- しらじゃーける・しらすか
- しらっくら
- シロバッコイ
- じん
しいなくれる
意味
しなびる
使用例
このせんべいは古いだら。しっけちゃって、しいなくれちゃってるやあ。
(何だね、この煎餅は、古いんだね。湿気を帯びて、しなべているよ)
解説
いかにも、ヘナヘナして歯ごたえのない様子がうかがえます。
シエール・シエースカ・シエーライ
意味
できるできないできるよ
使用例
「シエール」「シエースカ」「シエーライ」
(「できる」「できない」「できるよ」)
解説
ロシアの三兄弟の名前みたいだけど、標準語で「~をすることができる」の」肯定・疑問形、否定形、宣言の方言なんです。アクセントはいずれも「エ」の部分かな?
…しがつら
意味
ながら
使用例
テレビを見がつら勉強しても頭に入らねえよ。
(テレビを見ながら勉強しても頭に入らないよ。)
解説
当地では、2つの動作が並行して行われていることを表す時「・・・しながら」の代わりに「・・・しがつら」という語を用いました。
したったか
意味
たくさん
使用例
今日のごはんはしたったかあるで、ポチもうれしいらよぅ。
(今日のごはんはたくさんあるからポチもうれしいだろうね。)
しなべる
意味
片付ける
使用例
時間になったでぼちぼちしなべて帰らずよ
(時間になったからそろそろかたづけて帰りましょう)
解説
しなべるは、物を片付けるという意味ですが、仕事などに区切りをつけて終わるという内容も含まれていたようです。いずれにしても、他の地方では聞かれない、たいへん珍しい方言の一つと言えます。
シマイカ
意味
しましょうか
使用例
「もう、しまいにシマイカ」
「しましょう」
(「もう、終わりにしましょうか」
「しましょう」)
解説
イントネーションがちょっと難しいけれど。若い人が使ったら面白いですね。
ジュルイ
意味
やわらかい、ぬかるんでいる
使用例
そこらへんじゅるいできーつけな
(その辺りはぬかるんでいるから気をつけなさい。)
しょぐなる
意味
しゃがみこんで
使用例
さぶいにそんならとこでしょぐなっていねえでこっちへおへえり
(寒いからそんなところへしゃがみ込んでいないで家の中へお入りなさい)
解説
昔の子どもたちは、おおどと呼ばれる広い庭で、寒さをものともせず、腰をかがめいつまでも泥んこ遊びをしていました。しょぐなるは、県内だけに通じる方言ですが、こんじょくなるという使われかたが市内の一部に残っています。
しょづむ
意味
つまみ
使用例
そんならとこでおさいをしょづんで喰ってちゃあだめじゃんか
(そんな台所の片隅のようなところでおかずをつまみ喰いしていては駄目だよ)
解説
おなかのすいた子どもが、台所に入り込んで、夕食のおかずをちょっと失敬したとき、それを見つけたお兄さんの言葉です。しょづむは、つまむという意味で「鼻をしょづむ」などという使いかたをします。
しょほうら
意味
あちらこちら
使用例
この時期んなると、しょほうらにつばめが飛んでるやー。
(この時期になると、あちらこちらにつばめが飛んでるよ。)
しょろしょろ
意味
のろのろ、ぐずぐず
使用例
しょろしょろしてると学校に遅れるで早く行くさよ
(のろのろしていると学校に遅れるから早く行きなさいよ)
解説
「のろのろ」とか「ぐずぐず」といった意味のこの言葉は、なんとなくせきたてられているようで、妙に説得力がありました。しょろくた、とも言い、どうかすると今でもお年寄りが使っています。
じょんじょん
意味
草履(ぞうり)
使用例
「新しいゴムじょんじょん買ってもらったで、こんだの潮干狩りン楽しみだやぁ。」
(「新しいゴム草履を買ってもらったから、今度の潮干狩りが楽しみだな。」)
しょんばい
意味
しおからい
使用例
謙吾ちゃんやっぱ海の水はしょんばいなあ。
(謙吾ちゃんやっぱり海の水はしおからいなあ。)
解説
中世・近世の時代にはしおからいことを「しおはゆい」(しおばゆい)という言葉であらわしていました。しょんばい、という語はこの「しおばゆい」が転じてできたと考えられます。
シラ
意味
敷板
使用例
「舟を出すからシラをしいとけよ」
(「舟を浜から海に出すから、敷板を敷きなさいよ。」)
解説
舟を引き上げるとき舟の下に敷く木材の敷板のことをいう。浜に上げた漁船(舟)を海に押し出したり、引き上げたりするためには、船底にシラをあてて滑り出させる。
修羅(しゅら)がなまってシラとなったと思われる。
しらじゃーける・しらすか
意味
白くなる・知らない
使用例
「わぁシラジャーケタ」
「そんなことシラスカ」
(「わぁ白くなって(ふやけて)しまった」
「そんなこと知らない」
しらっくら
意味
フラフラ
使用例
何ォしらっくらしてるだ!ちったァ、勉強しょお!
(何をフラフラしているのですか!少しは、勉強しなさい!)
解説
はっきりしないで、フラフラしている様子。子どもの時分から言われ続けている人も多いと思う。白黒から転じたものか。はっきりしないが、調べる気にもならず、しらっくらしている。
シロバッコイ
意味
白っぽい
使用例
はあ、やめりゃーいいに塗るもんで、顔が白ばっこくなるだよ。
(もうやめればいいのに塗るから、顔が白っぽくなるんだよ。
じん
意味
…しょう
使用例
「おおいィ、とうさん、お年玉くりょうやぁ」「あいん、ち。なにょー言ってるだ!!きんのォやったじん。だばあけてんな」「いえい、えい」
(「ねえお父さんお年玉をください」「ええ?おいおい何を言っているのだ。昨日渡したでしょう。たわけたことを言うなよ」「やいやい」)
解説
焼津市街地の浜に近い男性が使った“じん”は、焼津独特の方言と言えるでしょう。そして、あいん?とかち、という言葉を挟むと、より焼津っ子らしい雰囲気になってきます。この子のように、とそ気分の父親から、もう一度お年玉をせしめようとする茶目っ気のある元気な子、それが一昔前の焼津の子どもです。
す(5)
- ず(―ん)ない
- すいほろ
- すこ
- すどんこ
- すんみし
ず(ーん)ない
意味
我慢強い、強情
使用例
あの子は、ずーんないね。転んでも泣かないよ。
(あの子は、我慢強いね。転んでも泣かないよ。)
すいほろ
意味
風呂
使用例
だれかにすいほろへみぞォーいれさしょう。
(誰かに風呂へ水を入れさせろ。)
解説
すいほろは水風呂(すいふろ)か据風呂から転じたものでしょうか。水風呂は、蒸し風呂に対して水を用いたからともいわれています。ひと昔かふた昔前までは、どこの家でも桶の下にたき口のある風呂を使用していました。水道のないところでは、井戸や川から風呂水を汲むのは子どもの日課。そして藁や薪をくべるのも子どもたちの仕事でした。
すこ
意味
ずる
使用例
こらっ、カンニングして。「すこ」するてぇは、ろくなもんにゃあなんねえぞ。
(ずるいことをする人は、ろくなものにはなりませんよ。)
解説
「ずる」のことです。「すこい」は「ずるい」ことです。
すどんこ
意味
素肌にそのまま、素肌に着る、肌着を着けない
使用例
パジャマをすどんこじゃもうさみーら。
(パジャマを素肌にそのまま着たのでは、もう寒いでしょう。)
すんみし
意味
全く、いく分、少し
使用例
すんみし他人でもあるめえに
(全くの他人でもないでしょう)
解説
すんみしとは、全くという意味ですが、「全く・・・でもない」という使われ方をしますので、いく分、少しという意味でもあります。
せ(4)
- せいだっても
- せーだで
- せずようもない
- せばらったい
せいだっても
意味
そうは言っても
使用例
「左右違う靴下はいてくなんざぁ、あんたは本当におばかっちょーだね。」
「せいだっても、母ちゃんの子だからしょうーがねーら。」
(「左右違う靴下をはいていくなんて、ばかだね。」
「そんなこと言ったって、お母さんの子なんだからしょうがないでしょ。」)
せーだで
意味
それだから
使用例
せーだで気をつけろって言ったじゃん。
(それだから気をつけろって言ったでしょ。)
せずようもない
意味
どうしようもない、施しようがない
使用例
こんなん糸ん絡まっちゃったじゃあ、せずようもない。
(こんなに糸が絡まってしまったのでは、どうしようもない。)
せばらったい
意味
狭苦しい
使用例
そんなせばらったいとこへ入るじゃない。ポチが困ってるじゃん。
(そんな狭苦しい所へ入るんじゃありません。ポチが困ってるでしょ。)
解説
「狭い」というよりも、どちらかというと「狭苦しい」感じの時に使う。ただ単に、「狭い」という時は、「せばい」がある。
そ(7)
- そいじゃー・せいじゃー
- そうば
- そばいかある
- そりょう
- ぞろっぺい
- ぞんぐりする
- そんなり
そいじゃー・せいじゃー
意味
それでは
使用例
「そいじゃー、おれん行ってくるで。」
「せーだけえが、せいじゃー、わりいで、おらんいってくるでええよ。
(「それでは、私が行ってきます。」
「しかし、それでは、申し訳ないので、私が行ってきますから、いいですよ。」)
そうば
意味
こわれやすく
使用例
やあしょんねえなあのこぎりんそうばになっちゃった
(あれあれしかたがないなのこぎりがこわれやすくなってしまった)
解説
大工道具など、手入れをしないで物置へ放っておき、いざ使おうとすると、刃がさび、弱くなっていることに気づきます。こんなときに使った方言です。また、水気のない、ぼそぼそとして粘り気のない状態を「そうば」を言ったようです。
そばいかある
意味
はしゃぐ
使用例
よその家へ来てそんなにそばいかあるもんじゃあないよ
(よその家に来てそんなにはしゃぐものではありませんよ)
解説
ふざけたり、はしゃぎ過ぎておかあさんに子どもがしかられています。そばえる、とも言いました。一般に、見向きもしないことを「そばめる」とも言いますが、方言の意味内容とは全く異なっています。
そりょう
意味
それを
使用例
おれにもそりょうくりょう。
(私にもそれをください。)
解説
当地の人たちは「それを」の代わりに、そりょう、という言い方をしました。「れ」と「を」が一緒になって「りょう」という表現になったと思われます。いかにも威勢の良い、新鮮な魚を扱う人々の言葉といった感じがします。
ぞろっぺい
意味
だらしなくて、ぞんざい、乱暴、失礼な(人)
使用例
あいつあぞろっぺいでしょんねえなあ
(あの男はだらしなくてしかたがないなあ)
解説
うっかりして約束を破ってばかりいたり、人との接しかたや物の扱いが乱暴の人を「ぞろっぺいだ」といいました。ぞろぺい(え)はだらしない、そそっかしいという意味で富山・山梨でも使われているようです。ここ焼津では、ぞんざい、乱暴、失礼な(人)というとき使われていました。
ぞんぐりする
意味
ぞっと
使用例
夜道を1人で歩いているとぞんぐりするよ。
(夜道を1人で歩いていると(怖くて)ぞっとするよ。)
解説
「ぞんぐら」とも言うようです。
そんなり
意味
そのまま
使用例
カツオはそんなりじゃ食えねーら。
(カツオはそのままでは食べられないでしょ。)
解説
「こんなり」と言えば「このまま」の意味になる。
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ページ更新日:2023年7月27日