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方言「は行」
は(10)
- はあ
- はだって
- ばっか
- はなけ
- はなっから
- はなる
- ばね
- はりこんぼう
- ばんげんしま
- ばんたび
はあ
意味
もう、すでに
使用例
はえっきねぇはあ出来ただ?
(早かったね。もう出来たの?)
解説
副詞の「もう」「すでに」のこと。
はだって
意味
わざと
使用例
「はだって泣かすじゃない。この子は!」
(わざと泣かすんじゃありません。この子は!)
解説
反対の意味を表す言葉の「うっかり」「過って」の方言に「がらいか」がある。
ばっか
意味
ばかり
使用例
「ねぇ、待った」
「ううん、今着いたばっかだよ」
(「ねえ、待った」
「ううん、今着いたばかりだよ」)
解説
当地では「~したばかり」という意味で「~したばっか」と表現しました。
当地には、独特な方言が数多くありますが、話し言葉の中に「ばっか」とか「やっぱ」などの表現が出てくると、静岡県人であることが、すぐわかってしまいます。
はなけ
意味
得意
使用例
あの人ぁ魚んたぁんと釣れたっちょうもんではなけだっちょう
(あの人は魚がたくさん釣れたそうで得意になっているよ)
解説
魚や、いい野菜がとれたとき、その人も鼻が高いでしょう、という意味で「はなけだねぇ」と言い合いました。また夏場の暑いときなど、ようせい(養鰻池)の水面へ、うなぎが口を開けて浮いてくると、酸素不足を起こした状態を「はなけをおこした」と言いました。
はなっから
意味
始めから
使用例
はなっからまちげえるなよ。
(始めから間違えるなよ。)
はなる
意味
始まる
使用例
6時にコンサートがはなるでぼちぼち行かざあ。
(6時にコンサートが始まるからぼちぼち行きましょう。)
解説
コンサート会場や映画館では、人の話し声や物を食べる音が大変、気になるものです。また、コンサートなどが始まってから席に着く人を時々見かけますが、演奏家やまわりの聴衆のことを考え、早目に来場し、ゆとりを持って、鑑賞したいものです。
ばね
意味
前
使用例
静岡へ行きばねに俺ンちへちょっくらよってくりょう
(静岡へ行く前に僕の家へちょっと寄ってください)
解説
ばねは、はな(端)がばな、ばねと転訛(てんか)していったのではないかと思われます。どこそこへ行く前にとか、ついで、とたんに、というときに使われていました。
はりこんぼう
意味
ぶつかる
使用例
家の中でくるってるとどっかにはりこんぼうしてしまいにゃ泣くよ
(家の中でふざけているとどこかにぶっつかって泣くことになるよ)
解説
子どもは外で遊ぶものと、かつては相場がきまっていました。家の中でくすぶっているようものなら、それこそ子どもらしくないと親にしかられたものでした。はりこんぼうは、頭をぶっつけてこぶやすり傷などをつくったときに使われました。
ばんげんしま
意味
夕方
使用例
忙しいとこぉ悪いけぇが、ばんげんしまに寄合をやるで頼まぁ
(忙しいところを申し訳ないが、夕方、会合をやりますから頼みますよ)
解説
ばんげんしま、とは、夕日が今まさに沈もうとする、その時前後を意味します。「○○時集合」といわなくても、これでじゅうぶん用件は伝わり、会合もできました。ばんげしま、ばんげんさん、あるいは、やごろ、ともいいました。
ばんたび
意味
毎回、たびたび
使用例
もォ、ばんたび酔っ払って!
(もう、毎回酔っ払って!)
ひ(12)
- ひずらしい
-
ひっちばる
- ひっぽかす
- ひなる
- ひまっさい
- ひやかす
- ひやっこい
- ヒューケンボウ
- ひょうきん
- ひりくっつく
- びりだら
- ひろひろ
ひずらしい
意味
まぶしい
使用例
今日はひんずらしくて、目がちかちかするやあ。
(今日はまぶしくて、目がちかちかするなあ。)
解説
「まぶしい」を強調した言葉。仕事や深酒で午前様になり、休みの日の朝は寝坊することがたまにある。そんな日に、眠い目をこすりながら雨戸やカーテンを開けたりすると、夏の日差しに、思わず「うわあ、ひずらしくて、たまんねえやあ」とうなってしまう。
ひっちばる
意味
結ぶ、しばる
使用例
ほどけないように、しっかりひっちばるさよ。
(「ほどけないように、しっかり結びなさいよ。」)
ひっぽかす
意味
破って
使用例
やだよう、うちの人は仕事の約束をひっぽかしてゴルフへ行っちゃっただよう。
(困ったことに、うちの人は仕事の約束を破ってゴルフへ行ってしまいました。)
解説
「ひっぽかす」は、捨てるとか、そのままにする、という意味の関西弁「ほかす」という意味に強調語の「ひっ」がついてできたと考えられます。
ひなる
意味
泣き叫ぶ
使用例
そんなとこでひなってもアイスクリームは買わないよ
(そんなところで泣き叫んでもアイスクリームは買いませんよ)
解説
「ひなる」は悲鳴に近い声で子どもなどが泣き叫ぶという意味で使われました。
ひまっさい
意味
余分な用事
使用例
このごらあ、ひまっさいばっかで、おかあン、うるせえでえ。
(このごろは、余分な用事ばかりで、女房がうるさいんだよ。)
解説
「暇を割いて」が詰まって、「ひまっさい」になったと思われる。中年にもなると同窓会の幹事やら地元の役員やらでおおわらわ。そんなときに限って結婚式や法事がとび込んでくる。
ひやかす
意味
水に浸ける
使用例
お茶碗ひやかしとかなきゃ、かーばっちゃうよ。
(お茶碗を水に浸けておかないと、〔ごはんつぶが〕乾いて張り付いてしまうよ。)
ひやっこい
意味
冷たい
使用例
かき氷は、ひやっこくてうめえなぁ。
だけーが、いせーで食うと、頭んツーンとするやぁ。
(かき氷は、冷たくておいしいね。でも、急いで食べると、頭がツーンとするよ。)
解説
「冷たい」の意で、「ひやっこい」とも言う。「ひーやっこい」のように、「ひ」の伸ばし具合でその程度を表す人もいる。
ヒューケンボウ
意味
竹の節に小さな穴をあけ使う火おこし具。
使用例
昔は風呂を焚くときヒューケンボウを使って火をおこしたもんだよ。
(昔は風呂を沸かすとき火おこし器を使って火をおこしたものです。)
解説
ヒューケンダケともいう。あて字は「火吹棒」「火吹竹」。
ひょうきん
意味
乱暴
使用例
およしよぅ。ひょうきんにすると、こわれるでぇ。
(やめなさい。乱暴に扱うとおもちゃが壊れてしまいますよ。)
ひりくっつく
意味
まとわりつく
使用例
この人、ひりくっつくもんで、気ん持ち悪いよう。
(この人は、まとわりつくから、気持ちが悪いなあ。)
解説
「くっつく」の強調形。大概はええ意味にゃ使わない。
飲み会なんかで見境なく女衆に、べたんべたんひりくっつく(まとわりつく)覚えのある人は、すんげえ嫌われるので注意した方がよい。
びりだら
意味
だらしなくのんびり
使用例
あんましびりだらごはんを食べてるとつゆんさめちゃうよ
(あんまりだらしなくのんびり食事をしているとお吸い物がさめますよ)
解説
びりだらという言葉の中には、いかにもだらしのない、だらだらとした感じの響きがあります。最近では、テレビやラジオを見ながら聞きながらといった人が多いようですが、びりだらも時々がよろしいようです。
ひろひろ
意味
物欲しそう
使用例
あんまりひろひろしるじゃあないよ。みっともないで。
(あんまり物欲しそうにするんじゃないよ。体裁が悪いから。)
ふ(7)
- ぶしょったい
- ぶそくる
- ぶっぱらい
- ふぬく
- ふんずばす
- ふんだらげ
ぶしょったい
意味
不潔、汚らしい
使用例
まぁーず、ぶしょったい子だねェ、この子は。やっきりしちゃう。
(全く汚らしい子だねェ、この子は。腹が立つよ。)
解説
強調して表現する時に「こぶしょったい」とも言う。
ぶそくる
意味
すねる
使用例
あいつはへたなくせして試合に出さないとすぐぶそくるよ
(あいつはへたなくせして試合に出さないとすぐすねるよ)
解説
「ぶそくる」は機嫌が悪くすねている、という意味で「ぶそる」とも言いました。「ぶそくる」は、ぶすっとして不機嫌な様子がよく伝わってきますが、恋人同士の会話で「そんなにぶそくるなよ」と言うとせっかくの甘い雰囲気もこわれてしまうかもしれません。
ぶっぱらい
意味
はたき
使用例
部屋の掃除をするでぶっぱらいを持ってくるさ
(部屋の掃除をするからはたきを持ってきなさい)
解説
ほこりをふり払うところから、ぶっぱらいと言ったのでしょう。かつては、家庭でもはたきが作られ、それぞれに特徴がありました。今は、電気掃除機に取って代わられ、あまり使われなくなりました。
ふぬく
意味
解く(ほどく)
使用例
小包ん届いたでひもーふぬいて開けてみょう。
(小包が届いたからひもをほどいて開けてごらん。)
解説
当地では、結んだものや縫ったものを「解く(ほどく)」時、「ふぬく」という言葉を使いました。
当地では、「解く」ことを「ほのく」とも言いましたから「ふぬく」という言葉、この「ほのく」が転じてできたものだと考えられます。
ふんずばず
意味
ふみつける
使用例
誰でぇヘッピリムシをふんずばしたなぁ。くせーじゃねぇか。
(誰だ。カメムシをふみつけたのは。臭いじゃないか。)
解説
「ふむ」の強調語であり、定外の驚きや後悔の意を含んでいる場合に使われる。
ふんだらげ
意味
踏み荒らす
使用例
しょんねぇ小僧らだたにょうまえたとこをふんだらげにして
(仕様のない子どもたちだ種をまいたところを踏荒してしまって)
解説
11月から12月にかけて、麦まきが盛りの時期。元気な子どもたちは、畑の中で遊び狂って、せっかくまいた麦を踏荒し、農家のおじさんにしかられたものです。志太平野を吹き抜ける強い西風の中での麦まきや、寒さをものともしないで田畑を駆け回る子どもたちの姿は、今はもう見られなくなってしまいました。
へ(7)
- へえび
- へこまかす
- へさえる
- へったくたー
- ぺったん
- べろくた
- べんかんべんかん
へえび
意味
へび
使用例
よすさ、かまうなぁ。このへえびは噛まねえで。
(およしよ、からかうのは。このへびは噛まないから)
解説
「へび」を「へえび」とのばして発音するのは珍しいが、いかにもニョロニョロしている様子がうかがえる。ちなみに、トカゲのことは「へえびばんばあ」という。
へこまかす
意味
へこます、へこむように傷をつける
使用例
「やっべ~、野球やっててくるま~へこまかいちゃって~。」
(「しまった、野球をやっていて、くるまをへこませてしまった。」)
へさえる
意味
おさえる
使用例
ころぶとこまるでいそおしっかりへさえててくりょう。
(ころぶとこまるからいすをしっかりおさえていて下さい。)
解説
「おさえる」ことをなぜへさえると言うようになったかはわかりませんが、へさえるという言葉はいかにもこの地方の方言といった感じがします。「へさえる」とか「へっぴさえる」などとも言いました。
へったくたー
意味
下手くそ
使用例
おめえはへったくたーだなあ。
(きみはへたくそだね。)
ぺったん
意味
めんこ
使用例
俺のぺったん、見してやっか。すげぇぜん。
(私のめんこを、見せましょうか。すごいですよ。)
解説
地面にたたきつけたときの音から、この名前がついたのでしょう。ちびっ子たちは、自分のぺったんを見せびらかして自慢し合いました。ぺったんの裏には「グー、チョキ、パー」のイラストがありました。
べろくた
意味
でたらめ
使用例
そんねぇええ紙じゃべろくた書くにゃもってぇねぇよ
(そんなにきれいな紙ではでたらめを書くにはもったいないよ)
解説
昔も今も、子どもはいたずら書きが大好きです。現在では、らくがき帳といったものが売られていますが、物不足の時代には、紙そのものがたいへん貴重でした。子どもに限らず大人も、広告紙などの白い部分を利用してはメモ書きや字の練習などを行ないました。
べんかんべんかん
意味
長時間待っている状態。
使用例
べんかんべんかん、待たせて。はあ、2時間も経つに。やっきりちゃうぜん。
(やたら長い時間待たせて。もう2時間も経つよ。頭にくるよ。)
解説
「長時間待っている状態」のこと。
ほ(6)
- ぼいっくら
- ほおたん
- ほーちょん
- ぼっこい
- ほてっぱら
- ぽんぽん
ぼいっくら
意味
おいかけっこ、競走
使用例
おら、勉強はでえっきねえだけぇが、ぼいっくらは、はえーだでぇ。
(私は、勉強はできないけど、かけっこは速いんだよ。)
解説
「おいかけっこ」、「競走」の意。「ぼっかけっこ」とか「とびっくら」も同意語。
ほおたん
意味
ほっぺ
使用例
あの子のほおたんはりんごみたいに真っ赤だよ。
(あの子のほっぺはりんごのように真っ赤だよ。)
解説
隣の愛知県では、ほおのことを「ほおた」という地域があります。当地方の「ほうたん」はこの「ほおた」が転じたものと考えられます。
ほーちょん
意味
包丁
使用例
このほーちょんじゃさかなん切れないやー。
(この包丁では、魚が切れないよ。)
ぼっこい
意味
古い、使えない
使用例
ぼっこい自転車だけん、ガマンするさ。
(古い自転車だけど、がまんしなさい。)
解説
そういう物を指すときには「ぽっこ」ともいう。
ほてっぱら
意味
腹いっぱい
使用例
おめぇ、まんまあをほてっぱら食ってまだ食うだか。
(あなたは、ごはんをお腹いっぱい食べてもまだ食べるのですか?)
ぽんぽん
意味
バイク
使用例
大正町へ行くときゃあぽんぽんの方がはえーらえー。
(昭和通りへ行く時にはバイクの方が早いでしょうよ。)
解説
マフラーから出る断続的な排気音からつけられたようだ。主に原付バイクに使われる。焼津の場合は用途が広く、小船の場合にも「ぽんぽん船」などのように使う。
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ページ更新日:2023年7月27日