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【技術者インタビュー】西村信之氏(株式会社橋本組)

西村氏写真

市工事表彰受賞現場に学ぶ、インフラ更新の舞台裏とこれからの官民連携

水道管耐震化工事のリアルから見つめる「まちづくり」と「技術継承」の未来について、西村さんにお話を伺いました。(以降敬称略)

見えない場所で街を守る「水道管耐震化」の現場から

インタビュアー:西村さん、まずは改めて表彰の受賞、おめでとうございます。

西村:ありがとうございます。そう言っていただけると苦労が報われますね。

インタビュアー:今回の工事は、本市にとっても非常に重要なインフラである北部地区への基幹管路や、その周辺の水道管を耐震管へと更新するものでした。敷設から約50年が経過し、老朽化が進んでいた重要路線の更新です。約1km離れた場所では河川を越える推進工法も含まれており、工期的にも非常にタイトで調整力の問われる現場でした。一般市民のみなさんからは「道路を掘り返している工事」と見えがちですが、地中に大きな耐震管(ダクタイル鋳鉄管等)を一本一本つないで埋設していく、非常に高度で精密な工事ですよね。

西村: そうですね。耐震管というのは、地震時の大きな地盤変状に対応し、管の継手部分が伸縮したり、離脱防止機構を備えたりしているので、抜け落ちを防ぐ構造になっています。長さ6メートルの管をつなぎ合わせていくのですが、昔の管と違って地震の揺れに強いんです。ただ、その分、施工や取り回しには繊細な技術が求められます。

全長6mの排水管

インタビュアー:配水管敷設工事の難しさは、「完成形が地中に隠れて見えなくなる」という点にもあります。今回の表彰でも、ただ完成写真を見るだけでは分からない、現場での緻密な工程管理や近隣対応、地下の状況に応じた柔軟な判断が非常に高く評価されました。

地下の「未知」に挑む――現場で問われる柔軟な危機管理と調整力

施工の支障となる「地下の障害物」

インタビュアー:今回の現場で特に印象的だったのは、推進工法で発進立坑(縦穴)を掘る際、事前の試掘確認によって大きなトラブルを未然に防いでいただいたことです。

西村: あれはヒヤリとしましたね(笑)。事前にいただいた試掘データをもとに、立坑のセンター位置を現地で改めて精密に測定し直したところ、「このまま掘進したら隣接する重要な既設配水管に接触する」ということが分かったんです。

インタビュアー:判明した段階で、すぐに市と協議して位置を微調整されましたよね。もしそのまま機械を入れて壊してしまっていたら、市全体を巻き込む甚大な事故や損害につながるところでした。

西村: 地下埋設物には本当に泣かされますよ。過去の工事で撤去されずに残っていた旧管やモルタルが注入された廃止管、さらには図面に記載のない古い電気ケーブルまで出てきましたからね。「このケーブルは生きているのか?」と電気事業者を呼んで試掘し、皮を剥いて信号を確認して、死んでいると判明してから撤去する……といった作業の繰り返しでした。

インタビュアー:現在は市の方針として「将来の阻害要因を無くすため、旧埋設管は原則すべて撤去する」という運用にシフトしています。施工側としては手間も時間も倍以上かかる大変な作業だったかと思いますが、確実に処理していただきました。昔の図面データだけに頼らず、現場の「違和感」を見逃さずに試掘して確認する。まさにベテラン技術者の知見と洞察力が現場を救った事例ですね。

仮設ヤードの交渉と、地域住民とのコミュニケーション

インタビュアー:地下の課題だけでなく、地上での地域調整も相当ご苦労されたのではないでしょうか。

西村: 推進工法の仮設ヤードを確保するため、農地(田んぼ)を一時的に借りて埋め立てる必要があったのですが、農地転用の手続きや地主さんへの説明には約2カ月を費やしました。地主さんの中には非常に厳格な方もいらっしゃって、最初は書面だけ郵送していただければこちらで判断させていただくといった具合で、なかなか思いが伝わらず……。結局、意を決して直接お宅へお邪魔し、膝を突き合わせて工事の必要性と原状復旧の計画を丁寧に説明しました。最終的には深くご理解いただき、良い関係を築くことができました。

インタビュアー:現場施工箇所の市道に接道している私道が、7軒ほどの家屋が連なる行き止まりの道路でしたね。一箇所掘ると住民の方の車が出入りできなくなってしまう。

西村: だからこそ、前もって一軒一軒ご挨拶に伺いました。「来週の何曜日にご自宅の前を掘ります」「お車を日中利用される方は、8時半になったら仮駐車場にガードマンが誘導します」と、毎日変化する施工状況に合わせてこまめに情報を共有しました。

インタビュアー:そうした地道なコミュニケーションがあったからこそ、長期間の全通行止めにもかかわらず、住民からの苦情がゼロだったわけですね。

西村: ありがたいことに、真夏の暑い日には近所のおばあちゃんが「暑い中、ご苦労さま」とアイスクリームを差し入れてくれたこともありました。昔はよくあった光景ですが、今の時代にそう言っていただけると、本当に現場の励みになりますね。住民の方のご理解と協力がなければ、この工事は完成しませんでした。

技術の進歩と「安全・品質」を高める現場の工夫

スピードショア(可動式土留)と最新測量機器の活用

インタビュアー:今回の現場では、安全対策や工法面でもさまざまな工夫が見られました。特に狭小地や湧水が多い箇所での「土留(どどめ)」の選定はいかがでしたか?

西村:この地域は非常に地下水が多く、少し掘ると砂利層からどんどん水が湧いてくるエリアです。そのため、従来の一般的な簡易矢板工法ではなく、「スピードショア」と呼ばれる箱型の可動式土留を採用しました。これは安全性が非常に高く、崩壊リスクを防ぎながら確実にスパンを仕切って施工できます。

スピードショア

インタビュアー:パネルを滑り込ませて土砂を防ぐ工法ですね。作業スペースが限られる現場でも安全に作業員が入れる環境を確保されていました。

西村:それと、最終的な舗装復旧の出来形面積測量では「自動追尾型トータルステーション」を活用しました。昔なら二人掛かりでテープを引っ張り、一人が記帳して三辺測量で複雑な三角形を何個も描きながら微調整していた作業ですが、今は一人でターゲットを持って測量端末アプリのボタンを押すだけで、正確な座標データが取得できます。

インタビュアー:橋本組さんは近年、3Dレーザースキャンによる点群データの取得や、AI・ICT技術の導入を全社的に推進されていますよね。

西村:ええ。トンネル復旧工事の現場などではレーザースキャンで覆工の変形を3Dデータ化して施工に反映させています。ただ、最新機器は進化が早すぎて、現場の監督個人がすべてを使いこなすのは限界があります。そのため弊社では「技術支援部」を立ち上げ、専門部署が現場の点群データ処理や測量をバックアップする体制を作っています。便利なツールは積極的に使い、現場の負担を減らしていくことが不可欠ですね。

これからの建設業界――「働き方改革」と「若手・技術の継承」

完全週休2日制と適切な工期設定

インタビュアー:さて、ここからは少しテーマを広げて、建設業界全体の働き方や若手育成についてもお聞きしたいと思います。現在、官公庁工事では「週休2日対象工事」が標準化しつつありますが、現場の感触はいかがですか?

西村:正直なところ、私たちベテラン世代は「休みなく働くのが当たり前」という時代を過ごしてきましたが、今の若い世代は「しっかり休んでプライベートの時間を作ること」を何より重視します。週休2日が確保できない職場には、そもそも人が集まりません。

インタビュアー:発注者側としても、単に「週休2日を求める」だけでなく、猛暑対策や突発的な協議変更期間を考慮した「余裕のある工期設定」を行うことが極めて重要だと痛感しています。

西村:本当にそうですね。夏場の猛暑は10年前、20年前とは異次元の厳しさです。現場で無理をさせれば熱中症事故につながりますし、ゆとりのない工期では現場管理が雑になってしまう。発注者側がしっかりとした工期と適切な積算補正を確保してくれることが、現場の安全と品質、そして労働環境の改善に直結します。

若手技術者・多様な人材へのアプローチ

インタビュアー:橋本組さんでは、毎年多くの新卒採用を継続されており、現場では若手や女性の技術者、さらには海外からの技術者の姿もお見かけします。

西村:10年ほど前から「毎年20人規模の新卒採用」を目標に掲げ、14カ月の研修期間を経て育成を続けています。現場に行くと「この子は筋がいいな」「将来伸びるな」と感じる若手や女性監督も増えてきました。また、外国人技術者(ベトナムからの技術者など)も非常に真面目で、日本語や最新技術をどん欲に学び、現場のキーマンとして活躍してくれています。

インタビュアー: 一方で、育成の難しさも増しているのではないでしょうか。昔のように「見て覚えろ」「怒鳴って教える」という指導は通用しませんよね。

西村:まったく通用しませんね(笑)。きつく注意するとパワハラになってしまいますし、一人ひとりの価値観に寄り添いながら「何のためにこの作業をするのか」を言葉で丁寧に教える必要があります。自分たちの若い頃の常識を捨て、時代に合わせた指導法へアップデートすることが、私たちベテラン世代の役割だと思っています。

地図に残り、人の暮らしを支える仕事の誇りを次の世代へ

インタビュアー:最後に、これから建設業界を目指す若い世代に向けてメッセージをお願いします。

西村:建設・土木の仕事の一番の魅力は、「自分が関わった仕事が形になり、地図に残り、人々の暮らしを陰で支え続けること」です。
子どもが小さかった頃、街を走りながら「この道路や施設は、お父さんたちが作ったんだぞ」と胸を張って言えたときの誇りは、今でも忘れません。水道工事のように地上からは見えなくなる仕事であっても、「地震が来てもこの街の水は止まらない」という安心を提供しているのは、私たち現場の技術者であり、それを支える行政のみなさんです。
どちらも本当にやりがいのある仕事です。

インタビュアー:本当におっしゃる通りです。受注者と発注者が互いの専門性を尊重し合い、最新のICT技術や適切な労働環境(週休2日・適正工期)を取り入れながら、未来に向けた安心・安全なインフラを共創していく。それこそが、次の世代にこの魅力的な業界を引き継ぐ鍵になると確信しました。
西村さん、本日は現場のリアルな知見と温かいメッセージをありがとうございました!

西村: こちらこそ、ありがとうございました。これからも良いまちを目指して、一緒に頑張りましょう!

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焼津市 総務部 契約検査課   検査担当

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ページ更新日:2026年8月14日

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