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【技術者インタビュー】 八木克久氏(佐藤建設株式会社)

八木氏写真

現場の知恵とICTが拓く建設行政の未来

安全確保の現場工夫から、DX推進・働き方改革・未来の技術者育成まで、八木さんにお話を伺いました。(以降敬称略)

激しい通行量と現場の安全確保――柔軟な「設計変更」と官民協働の成果

インタビュアー:この度は優良建設工事の受賞、おめでとうございます。今回表彰の対象となった現場は、大型車両や一般市民の方々の車両が頻繁に行き交う非常に条件の厳しい場所でした。まずは施工にあたっての課題と工夫についてお聞かせください。

八木:ありがとうございます。今回の工事は、ブロック積みや排水構造物、グランド舗装に加え、湧水処理用の吸水口と吐水口を設置する盛りだくさんの内容でした。一番の懸念事項は、現場に隣接する環境管理センターへ向かう20トン級の大型トラックや、隣接するミニステーション(家庭から出る資源物の回収所)を利用される一般市民の皆様の「安全確保」でした。
当初の設計プランでは、もともとの入り口から吐水口の横断カルバートを施工する間、車両を法定外道路へ迂回させる計画になっていました。しかし、20トン車のような大きな車にとって、その迂回路はカーブが急すぎて非常に危険だと感じたのです。

インタビュアー:私も施工期間中に何度も現場の近くを通りましたが、とにかく通行量が激しく、配慮と調整が極めて大変な現場だと感じていました。仮設道路を敷地内に作るというのは、受発注者双方にとってリスクも伴うご提案でしたよね。

八木:ええ。ですが、社内で議論し、「現場敷地内に幅6メートルの仮設道路を自前で作るべきだ」という結論に至りました。ミニステーションと環境管理センターのご理解とご協力をいただき、敷地奥まで迂回できる安全な動線を確保したのです。
工期全体の約半分をこの仮設道路の運用に充て、残りの期間で切り替えてグランドを掘り下げていきました。結果として、既存道路側の整備部分を通行止めにして一気に施工することができ、安全確保の面で絶大な効果がありました。

工事中の仮設道路

インタビュアー:公共工事は税金を使っている以上、当初設計は費用を最小限に抑える組み立てになりがちです。しかし現場の安全管理上、施工者側から「より安全な動線」の提案を受け、事業担当の河川課が柔軟に「設計変更」に応じた。この素早い判断と協働こそが、工事を無事故で完成させることができた一つの要因ですね。

八木:本当に河川課さんの迅速な対応に助けられました。また、施工時の工夫としては、法定外道路側の切土作業の際、地山が崩れてこないよう20〜25メートル刻み(約4スパン)で地山から切り張りを全体に突っ張り、崩落を確実に防ぐ対策を行いました。検査監からも「非常に良い創意工夫だ」と評価していただき、現場の士気も上がりましたね。

湧水・大雨・突発課題――過酷な現場を乗り切る「現場力」

インタビュアー:今回の工事は、延べ人数約1,400人、工期283日という非常に大きな規模でした。施工中のご苦労も多かったのではないでしょうか?

八木:数値として振り返ると、思った以上に多くの技術者や職人が関わってくれたのだと実感します。苦労した点としては、まず「水対策」がありました。
事前測量の段階から地下水面が高く、ちょうど透水性砂利を敷く少し上の高さまで水が湧き出ていたのです。若手の現場代理人が中心となって担当していたのですが、線路側のボーリングデータと見比べながら、現場内に入り込む水への対応に相当苦心していました。

インタビュアー:水対策に加えて、気象条件の急変もありましたよね。

八木:そうなんです。10月下旬に予想を超える大雨が降り、川からの水が現場内に越水して一面水没してしまいました。前日の夜10時頃に現場を確認した時はすでに水がいっぱいで、青ざめましたよ。幸い重大な被害には至りませんでしたが、翌日は水を排水し、入ってきた砂泥を掃除する作業に追われました。まさか川から水が入ってくるとは思いませんでしたから。
ただ面白いことに、この現場は地下水を綺麗に拾う「ポラコン側溝」を採用していたためか、湧水自体が非常に綺麗でしてね。水が引いた後の末端のマスには魚が泳いでいて、魚にとってはとても良い環境ができていました(笑)。

インタビュアー:自然現象相手の厳しさと、現場のたくましい対応力が伝わってくるエピソードですね。また近年は、台風だけでなく「夏の危険な酷暑」も大きな課題になっています。

八木:猛暑対策はもう限界にきていますね。昔のように「精神論」で乗り切れるレベルではありません。弊社でも作業時間のシフト調整や日除けテントの設置、空調服の着用などあらゆる対策を打っています。
また、発注者側の理解も不可欠です。昨年8月、猛暑の午後一番から実施した現場検査で気分を悪くされる方がいらっしゃいました。そのため、気温がピークを迎える時間帯を避け、涼しい夕方に検査時間をずらしてもらうよう相談させていただきました。発注者側が柔軟に対応してくださり、大変ありがたかったです。

インタビュアー:公務員の監督業務においても熱中症リスクは等しく存在します。無理な時間帯の立ち会いを避け、安全な時間帯へシフトすることは、受発注者双方の健康を守る上で当然の配慮です。こうした配慮が当たり前にできる現場環境を定着させていかなければなりません。

ICT施工の「現実」と行政デジタルの壁――成果を最大限活かす官民連携

インタビュアー:今回の現場では、ブルドーザーを用いたICT(情報化施工)技術も取り入れられたと伺いました。

八木:私はICT機器を使った施工が今回で3回目になります。今回はグランド舗装の整地に小型のブルドーザーとトータルステーション(TS)を組み合わせたマシンコントロール(MC)技術を活用しました。
ただ、ここで知っていただきたいのは、「ICTを使えば誰でも簡単に完璧な施工ができるわけではない」という現実です。

ICT技術を利用した重機

インタビュアー:と、おっしゃいますと?

八木:ICT建機は、現地に設置したトータルステーションから3D設計データを機器に飛ばして刃先を自動制御します。しかし、風が吹いて測量機器がわずかに傾いたり、毎朝の刃先セットアップ時に基準値に対してプラスマイナス25ミリ程度の「ブレ(卵1個分ほどの誤差)」が生じたりするのです。
そのままブレに気づかず施工を続けると、仕上がりの高さが高くなりすぎてしまったり、逆に厚みが足りなくなったりします。だからこそ、私たちは毎日基準となるポイントに刃先を置き、自分たちのレベル(水準器)で測った高さと照らし合わせ、データ上に手作業で修正をかけて精度の補正を行っているのです。

インタビュアー:最新技術を導入しても、最終的に精度を保証するのは「人間の技術と確認の目」ということですね。ICTは魔法の道具ではなく、使いこなす技術者の腕があってこそ生きるものだと。

八木:その通りです。そしてもう一つ、行政の皆様にお伝えしたい課題があります。私たち施工者は高いリース料を払ってICT建機を導入し、3Dデータやヒートマップ(面的な出来形管理データ)を作成して納品します。しかし、市役所側にその3Dデータを取り込んで確認・検査できるソフトウェアや高性能なPC環境が整っていないことが多いのです。
結果として、せっかくの3Dデータがあっても、最終検査は従来の「レベルを使った点での測定」にならざるを得ないのが現状です。

インタビュアー:それは行政側として非常に痛感する部分です。現在、国や県からは「ICT工事実施要領」の策定や導入が促されていますが、ハード・ソフト両面の環境整備が受注者側のスピード感に追いついていません。
焼津市では契約検査課で検査や立ち合い用のPCを確保するなどの対応を始めていますが、工事を担当する市職員全体が3Dデータをはじめ様々なデータを取り扱い、画面上で視覚的に品質を確認できる体制を整える必要があります。「受注者だけが先に行き、発注者が追いついていない」という状態を解消しなければ、ICTの本当の効果は発揮できません。

遠隔臨場とスリム化――働き方改革を「形式」から「実効」へ

インタビュアー:現場の作業効率化という点では、「遠隔臨場(Webカメラやウェアラブルカメラを活用した遠隔立ち会い)」の導入も話題に上がっています。

八木:特記仕様書に「遠隔臨場対応可能」と記載されるケースが増えてきました。しかし実際の現場では、役所から現場が近いと「近いんだから現場に来て直接見るよ」と言われてしまうことがまだあります。
もちろん現地確認はとても重要ですし、現場打ちコンクリートの配筋検査など若手職員が現地で直接見て学ぶべき工程があるのは理解しています。しかし、JIS規格製品の材料確認や、生コンの出荷確認など、書類や写真、画面越しで十分確認できるものまで全て現地立ち会いを求められると、移動時間がロスになってしまいます。

インタビュアー:職場の自席から片道30分かかる現場であれば、往復で1時間の移動時間が発生します。その1時間を削減できれば、受注者も市職員も他の業務に時間を充てられ、残業を減らすことができます。
遠隔臨場は「移動時間の削減」だけでなく、「時間の有効活用」にも大きな威力を発揮します。例えば「現場の工程上、今日の10時に立ち会いたいが、市職員が会議でどうしても行けない」という場合でも、会議前の10分間でパソコン画面越しに確認できれば、現場の待ち時間を無くすことができます。

八木:そう言っていただけると助かります。業務をスリム化し、官民ともに早く帰れる環境を作っていくことこそが、本当の働き方改革ですよね。

インタビュアー:現場を自分の目で確認するということはとても重要なことですが、「どこを現地で厳格に見るべきか」「どこをデジタルで効率化すべきか」のメリハリをつけることで、効率的な働き方を実現することができるはずです。

形に残る誇り、地域を守る使命――これからの公務員・建設技術者へ

インタビュアー:お話は尽きませんが、最後に「建設という仕事への想い」と、これから建設業を目指す若い世代へのメッセージをお願いいたします。

八木:私がこの仕事をしていて一番の醍醐味だと感じるのは、「自分が手がけた仕事が形として残る」ことです。
例えば橋の銘板(名前が刻まれたプレート)や建物の定礎板には、施工に関わった会社や技術者の名前が残ります。昔、自分が関わった構造物を通るたび、子どもに「これはお父さんの会社が作ったんだぞ」と胸を張って言える。こんなに面白く、誇りを持てる仕事は他にありません。
たとえ道路や地下の水道管のように、完成後は目に見えなくなってしまうインフラであっても同じです。自然災害が起きた時、地域住民の命や暮らしを一番足元で支えているのは自分たちなんだという「誇り」があります。

インタビュアー:本当にその通りですね。かつて戦後の高度成長期などは「官側の技術力が圧倒的に高く、官が民を指導する」という時代がありました。しかし現代において、最新技術や現場のノウハウは完全に「民側のほうが高い」という逆転現象が起きています。
だからこそ、これからの公務員技術者は「監督者」として指示を出すだけではなく、民間の高い技術力と創意工夫を柔軟に受け止め、伴走する「良きパートナー」でなければなりません。

八木:弊社の若い社員たちも、最初はわからないことばかりですが、現場を任され、自分で考えて工夫する中で少しずつ顔つきが変わっていきます。弊社には野球部があり、全国大会を目指して土日も汗を流しながら現場で頑張っている若い子たちがたくさんいますが、彼らの打たれ強さと成長には頭が下がります。
若い世代の皆さんには、恐れずにまず現場に飛び込み、素直な気持ちでチャレンジしてほしいですね。任された経験が、必ず自身の成長と責任感につながります。

インタビュアー:事務作業の合理化やデジタルの活用を進め、若い人たちがのびのびと働き、早く帰れる環境をつくるのが官民問わずベテランの使命になっています。

八木:地域の安全・安心を守り、未来の街をカタチにしていく公共工事の仕事は、間違いなく大きなやりがいに満ちています。我々民間企業は行政としっかりと手を携え、より魅力ある現場と街づくりを推進していくのが理想の姿だと思います。

インタビュアー:地域の守り手であるという想いがとても頼もしく思います。今日は様々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

八木:こちらこそありがとうございました!

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焼津市 総務部 契約検査課   検査担当

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ページ更新日:2026年8月14日

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